HONTSUGI

よだかのプロフィール

自己紹介

幻想文学が好きです。 主に海外文学を読みますが、 勧められたら何でも読むタイプです📖 ポッドキャスト「翻訳文学試食会」のリスナー。 ラジオネームは「世界のすべての本好き」です。

最近書いた推しコメ

『ピンポン』

パク・ミンギュ / 斎藤 真理子 / 白水社 / ISBN 9784560072585

よだかの推しコメ

韓国文学にハマった時期がある。 というか、ずっとハマっている。 そのきっかけとなった本がパク・ミンギュの「ピンポン」だ。 日本で韓国文学が流行って久しいけれど、 私は「ピンポン」を超える面白い作品に、いまだ出会っていない。 これが韓国文学なのか!!! という横っ面を殴られたような衝撃ではじまり、 ……これが韓国文学、なの、か? という戸惑いと驚愕で終わる。 何を言ってるかわからないと思うけれど、実際にそういう本なのだ。 信じられないなら、本屋に行って、最初の1ページだけでも読んでみてほしい。 ついでに227ページも開いてみてほしい。 「ピンポン」は、わけのわからない展開のわりに、あらすじを説明するのはたやすい。 卓球を通じて陰キャ少年たちが仲良くなる話だ。二人には、人類をアンインストールする権利が与えられる。 何の力もなかった少年たちが、突然世界の命運を握る。ほとんどセカイ系と言ってもいい。 ただし、「ピンポン」は私の知る限り、どんな型にもハマらない作品である。 孤独に震えながらダンスミュージックを踊るような、相反するハチャメチャな感情のぶつかり合い。宇宙から人間の営みを見たら、こんな感じなのかもしれない。 宇宙といえば、作中に「ハレー彗星を待ち望む人々の会」という組織が登場する。 その名の通り、ハレー彗星によって地球が滅ぼされる日を待ち望む人々の集まりだ。 世界から取り残されてしまった彼らの姿は、どこか滑稽で愛らしい。それに、なんだか懐かしい。 私にも、ただぼーっと空を見上げながら「終わらないかなあ、世界」とか呟きたくなる時もある。 中学生なら許されるが、大人がやると痛々しい。 けれど、そんな痛々しい大人になった人にこそ、強くオススメしたい一冊なのだ。

『氷』

アンナ・カヴァン / 山田 和子 / 筑摩書房 / ISBN 9784480432506

よだかの推しコメ

「一番好き」「オールタイムベスト」という言葉に直面すると、思わず一歩後ろに退いてしまいそうになる。 数えきれないほど本を読んだとは言えないけれど、順位をつけることをためらうほどには、思い入れのある本が多い。 そんな中でも、「これは必ず入る!」という一冊がある。 アンナ・カヴァンの『氷』だ。 もともと日本文学ばかり読んでいた私が海外小説しか読まなくなったのは、ぜんぶこの本のせいである。 カヴァンに出会っていなかったら、私はいまも海外小説のことを、どこか遠い国のおとぎ話のようにしか感じなかったかもしれない。 それほどまでにこの物語は個人的で、内面的に描かれている。 人生のどこかで負った古傷を、鋭い刃物でぶっ刺してくるような荒々しさ。それでいて虚無に近しい、無感情な冷たさがある。あまりに寄るべがなくて、存在しない痛みで苦しくなってしまうほどに。 カヴァンの本が刊行されたとき、大好きな作家である皆川博子さんがこんな推しコメを寄せていて、それが今でもずっと心に残っている。 「カヴァンを『読む』ことを必要とする」読者は必ずいます、と。 この「必要」という言葉がとても好きで、カヴァンという作家を説明するのにこれほど適した言葉はないように思う。 ある人にとって薬のような効能をもたらし、ある人に毒をのむような苦しみを与える作家。 あなたにとってこの本は、毒にも薬にもならないかもしれない。けれど、きっとどこかの誰かにとっては「必要」とする本になるはずだ。