『麦ふみクーツェ』
いしい しんじ / 新潮社 / ISBN 9784101069227
あくもの推しコメ
人生でいちばん好きな小説は、と言われたら、迷わずこれ。ティンパニ奏者のおじいちゃん・数学者のお父さんと暮らす少年「ねこ」の、音楽に彩られた日々の物語です。 優しい雰囲気の小説なんですが、いしいしんじという人は、このほんわかした字面の名前に反して本当に容赦がないんです。今作でも「読んでいるこちらのほうが立ち直れない…」と思わされる瞬間がしばしばあります。 でも「ねこ」をはじめ個性的な登場人物たちは、それらを自分の一部として受け入れてゆきます。 良いことも悪いことも等しく残るから、それらはやがて響き合い、最後には美しいハーモニーとなる。最後まで読むと、「人生がこうであったらどんなに素晴らしいだろう」と素直に思える小説です。 ここからは余談ですが、自分がずっと打楽器をやっていることもあって、この小説には何度も励まされてきました。 「音楽って楽しいよな」とか「音楽に支えてもらってきたな」とかいうことを思い出させてくれるシーンがいくつもあります。 出会ってから今までずっと、お守りのような存在です。